病院のあり方2

ここまでは現在の日本社会が資本主義経済で成り立っていることを紹介しました。資本主義経済を資本主義経済たらしめている根本的な原理は競争です。言い換えれば適度な競争によって資本主義経済は成り立っています。別の言葉で言えば市場経済です。史上における適度な競争、これこそが市場経済、しいては資本主義経済のエッセンスです。
市場経済におけるそれぞれの企業、事業体の究極的な目標は利益の獲得です。そこで働く各個人も同じことです。給与と言う利益の獲得を目的に就労しているわけです。ところで病院の話に戻りますが、もし病院、言い換えれば医療の世界に携わる病院を含めた各企業、事業体が完全に市場経済の考え方に沿って動くことになれば、当然ながらそれらはその存在意義を利益の獲得に置くことになります。では、もし本当にそういうことになれば、病院、診療所或いは医療に携わる事業体にはどういった変化が生じるでしょうか。まず病院や診療所は自ずと人口が密集する都市部に集中することになります。当然ながら人口の多い都市部の方が市場が大きく、儲かるチャンスが多いからです。逆に人口の少ない僻地では病院経営が成り立たなくなるでしょう。誰も好き好んで人口の少ない、言い換えれば市場が小さく儲かるチャンスの少ない地方、僻地に病院や診療所を開設したいとは思わなくなるでしょう。となるとそうした地方の所謂地域医療は死滅することになります。また都市部では病院が増えたことで過当競争、値下げ競争が起きることになるでしょう。そうなれば治療費の過度の低価格化を招き、それが医療の質の低下を引き起こすことになり、重大な医療事故の発生に繋がりかねません。病院は言うまでもなく人の命を預かるところです。医師や看護師等の医療スタッフはかくも大きな責任と使命感を背負って働いています。病院が患者に提供するサービスである治療は、「安かろう悪かろう」では困るのです。「価格が安いのだから、少々の不具合は我慢しよう。」と患者が考えるようなことがあってはいけないのです。病院が過当な価格競争に晒されることになれば、前出のように事故発生の危険性はもとより、病院の経営悪化や医療スタッフの給与水準の低下を招きかねません。そうすればスタッフの士気に影響し、いろいろな意味で悪影響を及ぼします。

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他の業界では過当競争が起こることはある意味消費者にとって有益です。競争にさらされた企業や事業体は価格を引き下げたり、品質やサービスを向上させたりすることで、顧客を引き付けようとします。顧客の側は値段と品質、サービスを見比べながら自らの一番求める、自分に一番合った商品、サービスを選択しようとします。ですがこうした事態が医療の業界で起こると消費者である患者、病院利用者にとって有益となるのでしょうか。この問題の答えについては、先に紹介した病院の過当競争の例が示すとおり、決して消費者にとって有益とはならないでしょう。有益どころか医療の世界を単なる利潤追求の手段と捉え、完全に市場システムにさらすことは、大きな禍根をもたらすと言えます。